最近読んだ本のまとめ 2017年3月

2016年12月から2017年3月あたりに読んだ本のメモ.新しい順.

なぜあなたは論文が書けないか

論文を書く際の基本的な事柄が読み易いかたちでまとまっている.類似の本を既に読んだことがある場合はかなりの部分が重複するはず.しかしながら,最後の査読への対応を説明している本は少ない(ような気がする)ので参考になる.そして,回答例の論文がのっており,査読回答というのは一般的にはオープンになっていないので,これをテンプレートのように利用できるので良いと思う.

章立て

  1. あなたが論文を書けないのには理由がある
  2. すべての物事は2度作られる
  3. なんとなく書いていないか?
  4. 書いただけで終わっていないか?

サードウェーブ

本書はインターネットの発展を3段階に分け,それぞれを”波”と表現している.第1の波は,インターネットの黎明期.現在はインターネットの第2の波,アプリ経済とモバイル革命,に位置している.そして,次の第3の波ではあらゆるものがインターネットに繋がり,あらゆる既存産業の構造が変革すると説く.

筆者はAOLの元CEOで共同創業者.筆者は第1の波での教訓が,第3の波でも必要になると考えており,AOLの創業から現在までの歩みを紹介する.第3の波では既存産業との協調が必要となるため,パートナーシップが重要になり,特に政府が関係してくる可能性が高い.イノベーションの多くは利益だけでなく社会的な目的を追求する起業家によって,地理的に分散して起こる.と考えている.

章立て

  1. 曲がりくねった道
  2. AOLの誕生
  3. 第三の波
  4. スタートアップ,スピードアップ
  5. 三つのP
  6. 破壊を許す
  7. シリコンバレーから「その他のあたゆる地域」ヘ
  8. 新たな潮流 ーー インパクト投資
  9. 栄光と挫折
  10. 見える手
  11. 破壊されるアメリカ
  12. 波に乗れ

未来化する社会

20~30年後の経済,産業の予測.筆者はオバマ政権で国務省の上級顧問を努め,外交政策とイノベーションの専門家として活躍する人物.世界を飛び回り,テック業界への造詣も深いようで,本書の内容は非常に信頼できるように感じた.ただ,広く浅くな本であるため,他の場所で読んだような内容も記述されている.しかし,本書の価値は個別分野の話題というよりは,それらを集め全体的にどんな社会になるかという統合的な視点が得られるところだろう.

章立て

  1. ロボットがやってくる
  2. ゲノムの未来
  3. 通貨・市場・信用のコード化
  4. コード戦争時代
  5. 情報化時代の原材料 ーー データ
  6. 未来の市場の地勢

21世紀の貨幣論

「貨幣とは交換の際に使用される媒体である」これは標準的な貨幣観である. 本書はこの貨幣観が誤りであることを,標準的な貨幣観のスタート地点である物々交換経済が存在した証拠が存在しないことを根拠し主張する.そして,貨幣とは「債務の単位を測定し,記録し,譲渡可能にするもの」という貨幣観を提示する.その後,貨幣の起源にさかのぼり,なぜ間違った貨幣観が広く受け入れられるようになったか,そしてその弊害,現在の貨幣システムの改善するにはどうすべきかなどを説明する.

本書を読むまでは標準的な貨幣観に疑いをもっていなかったが,確かに本書を読む本書が提示する貨幣観のほうが納得感がある.実際に標準的な貨幣観に基づく経済学はリーマンショックなどをまったく予測できなかった.複雑化した仕組みが信用創造していたと考えれば納得がいく.

章立て

  1. マネーとは何か
  2. マネー前夜
  3. エーゲ文明の発明
  4. マネーの支配者はだれか?
  5. マネー権力の誕生
  6. 「吸血イカ」の自然史
  7. マネーの大和解
  8. ロック氏の経済的帰結
  9. 鏡の国のマネー
  10. マネー懐疑派の戦略
  11. マネーの構造改革
  12. 王子のいない『ハムレット』
  13. 正統と異端の貨幣観
  14. バッタを蜂に変える
  15. 大胆な安全策
  16. マネーと正面から向き合う

やり抜く力 GRIT

人の将来,成功するかしないか,を決定するのは才能か努力かという,という話題に対して努力は非常に重要だと説く.そして,努力できるようになる方法について説明する.

やはり,生れ育った環境が重要なのだなあ,と再認識.ミクロではやる気がでる本.また,「やり抜く力」的観点から,他人への接し方を再考させられる(単純に褒めるだけでなく,さらに頑張れると一言添えるなど).

一方マクロでは,才能は先天的,努力は後天的に身に付き,裕福な家庭ではどちらも比較的身に付きやすい.すると,格差は拡大するばかりで,このあたりを救済できるような仕組みが必要と思う.

章立て

大きく3つのパートに分かれている.

  1. 「やり抜く力」とは何か?なぜそれが重要なのか?
  2. 「やり抜く力」を内側から伸ばす
  3. 「やり抜く力」を外側から伸ばす

小さく分けると13章に分かれる. 1章から5章がパート1, 6章から9章がパート2, 10章から13章がパート3である.

  1. 「やり抜く力」の秘密
  2. 「才能」では成功できない
  3. 努力と才能の「達成の方程式」
  4. あたには「やり抜く力」がどれだけあるか?
  5. 「やり抜く力」は伸ばせる
  6. 「興味」を結びつける
  7. 成功する「練習」の法則
  8. 「目的」を見出す
  9. この「希望」が背中を押す
  10. 「やり抜く力」を伸ばす効果的な方法
  11. 「課外活動」を絶対にすべし
  12. まわりに「やり抜く力」を伸ばしてもらう
  13. 最後に

ソーシャル物理学

「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学

人間社会,一般に成立する法則を外部観測可能なデータから探る.発見された法則を利用して,社会全体の生産性や効率を向上させるためにフィードバックをかける.

社会的関係な単純な行動の頻度などから集団の生産性や創造性をある程度予測できる.社会的関係が人間の行動に大きな影響を与えていることを定量的に示した.従来の人間は個人の利益のみを最大化する利己的で合理的な主体として定義されていたが,それとはまったく違う視点を追加する.

アイデア自体よりもアイデアの流れが重要.金銭的なインセンティブよりも社会的インセンティブのほうが人間を動かす.

チームくらいの規模の人数で,このような社会物理学的法則が成立するのは納得できたし,証拠もそろっていると感じた.しかし,この法則をより大きな都市レベルで適用する,という後半の話題はまだ,アイデアといか構想のレベルで,現時点では相関がある程度の結論しか導けていないのだと感じた.これは都市レベルの法則を見い出すためのデータが,現時点では不足していること,またフィードバックシステムが不在であるから仕方がないのだろう.著者が述べるように政府や企業を巻き込んだ仕組み作りを進める必要がある.

Who Gets What (フー・ゲッツ・ホワット)

マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学

市場,システムデザインをどう設計するかという話.例としては臓器移植,生徒と学校のマッチング,電波オークションなど.社会全体の幸福度が向上するような制度設計に関する話.その実装など.数学的には安定結婚問題,メカニズムデザインあたりの話だろう.とても面白かった.

理論的という,解析的な視点から制度のチューニングを提案し,導入してき,実際に効果が上るというのは素晴しい.